理事長挨拶 Board Chairman Greeting

理事長挨拶

ご挨拶

日本皮膚外科学会
理事長 大原 國章

理事長 大原 國章

 皮膚科医は皮膚病を専門とする医師である。皮膚病は皮膚のことを知っている医師が治すのが適切である。皮膚のことをよく知っているのは皮膚科医である。であるならば、皮膚の病気は皮膚科医が診療するのが当然である。この三段論法に異論を唱える人はいるでしょうか? しかし現実はどうでしょう。熱傷は救急部に入院して形成外科が手術する。膠原病は皮膚科では生検だけして、その後は膠原病内科にまわす。皮膚がんの手術は形成外科に任せる。癌の化学療法は腫瘍内科にお願いする。ややこしい感染症は感染症内科に依頼する。病理診断は病理医に頼る。さらに、乳児血管腫(苺状血管腫)は小児科に移行するかもしれない。

 専門領域が細分化し、治療内容や検査も高度化されるようになり、それに伴って多領域で編成されるチーム医療が推進されてきています。単独の診療科で診療を完結させるのは時代遅れなのかもしれません。素人が手を出すよりは、当該方面の専門家に任せる方がよいという考えもあるでしょう。

 その流れに乗ってしまうと、自分の診療内容が狭まり、存在価値さえ危うくなりかねません。最新の知識を吸収し、他科の考え方や手技を導入することにより、診療内容を広げ治療成績を向上させる、その方向を目指したいものです。

 皮膚外科の話に戻ります。本学会の目的、趣旨は「皮膚腫瘍、母斑、瘢痕その他、皮膚科の知識を持って治療にあたるべき疾患に関する臨床力の向上」であります。臨床力とは、臨床診断、病理診断、治療(外科的、保存的)のすべてを含みます。これらが三位一体となってこそ、適切な治療を患者に提供することができるのです。アメリカ式(?)に、診断は皮膚科医、病理はdermatopathologist、外科治療は形成外科医といった分業システムは功罪それぞれなように思われます。日本には日本独自の方式があってしかるべきですし、その持ち味、良さを維持・発展させるのも本学会の方向性となっています。

 視診による臨床診断は皮膚科医の真骨頂ですし、ダーモスコピー、超音波などの画像検査も必須です。病理診断については病理医と丁々発止と討論できるだけの知識を蓄えたいところです。治療についてはメスを持っての外科治療だけでなく、cryosurgery, electrosurgery, laser surgery、また薬物治療にも精通していなければなりません。本学会はそういった総合的な医療を目指しています。もちろん、外科的手技に関しては形成外科の知識・技術も習得する必要がありますし、形成外科医との共同、意見交換の場としても機能する方向を目指しています。

 本学会は、「皮膚外科勉強会」という名称で始まりました。自由活発に意見交換、本音でしゃべる、謙虚に教えを乞う、“秘伝のコツ”を公開する、成功の自慢話でなく失敗談も話す、向上するためには何が必要か、施設間の垣根や年齢の差、経験の長短にかかわらない質疑応答、そしてもちろん親睦・交流、これがモットーでしたし、その伝統は今も続いています。 手術に限って言うと、施設によって使う道具やその使い方、術式選択、細かい手技の違いがありますが、それぞれの長所を共有することも目指しています。

 “勉強会”から“学会”に名称が変更された後もその精神は継続し、皮膚外科医の育成、一般皮膚科医の手術手技の底上げ・標準化にも取り組んできています。 医療費抑制のあおりで大学病院では予算や人員数の削減が続き、その対策として手術件数増加での収入増を目指す動きがあります。しかし、それで皮膚外科医の地位が向上し、待遇が改善されたかというといささか疑問の点もありそうです。いくら手術を沢山こなしても疲弊するばかりで、英語の論文は書けないし、出世街道には乗れない、という嘆きも聞こえてきます。

 けれども、医師としての喜びは患者からの感謝の一言であり、外科医にしか味わうことのできない何ものにも代えがたい至福であり、次への活力となります。

 第1回の勉強会が開催されてから36年(2022年現在で)経過し、学会としての体制が整備・充実されて、今後さらなる発展を目指しています。国内での活動の充実もさることながら、海外との交流、特にアジア圏に対する日本の皮膚外科のアピ-ル、リーダーシップの発揮も重要な課題です。国内に閉じこもることなく、積極的に雄飛しましょう。日本の皮膚外科の実力を宣伝しなければなりません。

令和4年7月吉日
特定非営利活動法人 日本皮膚外科学会
理事長 大原國章

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